紅き天
あれだけ必死で動いて守ったものがなくなろうとしていると知ったら?



俺は間違っているんだろうか。



そんなことを考えている挙句、静乃に求婚しようとしているのは、やっぱり自分勝手でいけにことなんだろうか。



パタリと箸は止まり、疾風はじっと考えた。



今、俺の背中には何十kg、いや、何tもの責任が乗っかっている。



それをどうすればいいんだろう。



襖が開く音で我に返った。



「入ります。」



丁寧に言葉をかけて入ってきたのは妙だ。



「妙さん。」



慌てて正座する。



「静乃から貴方の考えは聞きました。
…えらく思い切ったことを。」


「すいません。」



まったくですと言わんばかりに妙はため息をついた。



「そんな理屈、連中が黙って聞き入れるとお思いですか。
たくさんの給料が入る仕事をおいそれ手放すとでも?」



ますます疾風は小さくなった。



「しかも、当主になって間もない男児の言う事を聞くとでも?」



キツイ。



この人、キツイ。




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