紅き天
悪いのは医者。


あの人は、好きだったのに。



静乃は帰ってから、一人泣いた。



ぼーっとしていると、ふいに疾風が顔をあげた。



「静乃!!」



静乃は慌てて顔を引っ込めた。



見られた!


どうしてかわからないが、無性に恥ずかしかった。



引っ込んでから、急に心臓がバクバクと音を立て始めた。



あの笑顔…。



輝いている、あの顔。



確かに、綺麗な笑顔は私に向けられている。



でも、私が望んでいるのは、「恋人」という関係。



そしてそれは絶対に叶わない。



疾風は普通の薬屋の息子なのだ。











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