紅き天
夕方、疾風が静乃を訪ねてきた。
部屋で裁縫をしていると、疾風の声が聞こえてきたのだ。
しかし、伝蔵が疾風を帰らせてしまった。
「静乃は風邪を引いているんだ。
今は部屋から出られない。」
「そうですか。」
今度薬を持って来ます、と言って、疾風は帰っていった。
静乃は柱の陰で、その会話を聞いていた。
どうして外出禁止なのに、疾風とも会わせてくれないのか。
他の人間ならともかく、疾風でさえ。
あの声でわかる。
かなり心配させてしまった。
静乃は静かに階段を上がり、部屋に戻った。