紅き天
次の日、疾風は静乃の家を訪ねた。
「静乃に会えますか?」
「無理じゃ。」
疾風は基子の言葉に首を傾げた。
「ただの風邪でしょう?」
風邪薬を掲げ、言った。
「あの子は今寝ておる。
ただの風邪でもこじらせると命に関わる。
昔からあの子の身体が弱いのは知っておろう?」
基子がうむを言わせぬ口調だったので、疾風は渋々諦めた。
「静乃に、よくなったら町へ行こうと伝えて。」
「わかった。」
一瞬、目を見張った基子だったが、一応頷いてくれた。
どうして、あんな頑なに面会を止められたのか。
どうして、余所余所しかったのか。
疾風は気になり、後で忍び込もうと決めた。
昔から何度と無く忍び入っていたのだから、静乃も今更驚かないだろう。