紅き天



「よっ、と。」



疾風は梨を持って静乃の部屋の前にある屋根に登った。



コンコン、と一応ノックはしたが、寝ているのか、返事は無かった。



「入るぞ。」



声をかけ、静かに窓を開けた。



いた。



静乃は布団に寝転がっている。



小柄な背中が見えたので、疾風は肩の力を抜き、近寄った。



「静乃~?」



返事が無い。



熟睡しているのか?



「静乃ってば。」



やっと、もぞもぞと動いた。



「ったく、早く起きろ。」



痺れを切らした疾風は静乃の肩を引っ掴み、少し乱暴に起こした。




< 40 / 306 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop