紅き天
「よっ、と。」
疾風は梨を持って静乃の部屋の前にある屋根に登った。
コンコン、と一応ノックはしたが、寝ているのか、返事は無かった。
「入るぞ。」
声をかけ、静かに窓を開けた。
いた。
静乃は布団に寝転がっている。
小柄な背中が見えたので、疾風は肩の力を抜き、近寄った。
「静乃~?」
返事が無い。
熟睡しているのか?
「静乃ってば。」
やっと、もぞもぞと動いた。
「ったく、早く起きろ。」
痺れを切らした疾風は静乃の肩を引っ掴み、少し乱暴に起こした。