紅き天
「きゃ!?」



寝ぼけ眼の静乃は何がどうなっているのかわかっていないようだ。



「俺。
久し振りに忍び込んじゃった。」



二ヒッと笑う疾風を見る目がだんだんと咎める視線に変わった。



「疾風、見つかったらどうするの?」


「怒られる。
そんだけだろ?」



実際、今まで見つかった時も、「なにやってるんだ!」で終わっていた。



「今回はちょっと違うの。」



静乃は声を落とし、疾風を窓に追い立てた。



「なんで?」


「なんでも。」



本気で焦っている静乃につられ、疾風もなんだか焦ってきた。



「いいから。
早く、見つからないうちに。」


「嫌だ。」



せっかく会えたのに、このまま別れるなんてつまらない。







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