紅き天
別に、静乃が元気なら会ってもいいはずだ。



「ほら、梨買ってきた。
食べようぜ?」



疾風は懐から2つ梨を取り出し、ナイフと一緒に静乃に渡した。



「剥いて。」


「疾風、私は病気なんでしょ?」



なら剥いてよ、と静乃の目が言っている。



病気だと言っているわりには元気だ。



「なあ、静乃、お前は本当に病気なのか?」


「え?」


「おばさんの態度も変な感じだったし。」



おかしいよ、と最後に付け足すと、静乃は梨を弄んでいた手に視線を落とした。



「ちょっと事情があってね。
今、謹慎中。」



謹慎中?



伝蔵に言われたのか?



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