紅き天
「見つかっちゃうよ。」



言われて辺りを見渡してみれば、なるほど、店の正面に回りそうになっていた。



「悪い悪い。」



焦った〜…。



頭をポリポリと掻く。



「どうしたの?」



静乃が覗き込んでくる。



「何でもない。
ちょっとボーッとしてた。」



軽く頭を撫でて、言った。



「こっから登るんだろ?」


「うん。」



頷く静乃の腰に手を回し、持ち上げた。



「登れ。」


「うんッ。」



静乃は上手い具合にあるとっかかりに手を掛け、身軽に登って行った。



…コイツ以外に男より身軽に二階に登る女がいるんだよ。



俺は世間にそう問うてみたい。



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