紅き天
5年後
静乃は呉服屋ののれんを出し、伸びをした。
道を挟んだ斜向かいの店が疾風の家、薬屋である。
お互い商人の家に生まれ、年が同じである事から、付き合いは続いている。
「静乃。」
店に入ろうと背を向けると、後ろから声がかかった。
「おはよう。」
静乃もニッコリと笑いかける。
「今日、父さんが隣の町に出かけるってさ。」
「本当に!?」
静乃ははしゃいで声を上げた。
「うん、本当。」
落ち着け、と疾風は静乃の肩に手をかけ、言った。
「昼までに用意出来るか?
俺も用意するから。」
「わかった。
父様に訊いてみる。」
静乃はパッと身を翻し、奥へと走っていった。