紅き天
婚約者
今日も1日頑張ろう。
静乃は呉服屋ののれんをかけ、伸びをした。
今日はいい天気だから、疾風を誘って遊びに行こうかな。
この間の茶屋に行ってもいいし。
静乃はムフッと笑い、中に戻った。
そして、基子に疾風の所へ行ってくると告げ、再び外へ出た。
小走りに通りを横断し、薬屋ののれんをくぐる。
「おはようございます。」
声をかけると、宗治が出てきた。
「おう、静乃。」
「疾風は?」
「今、上だ。
上がって起こして来てくれると喜ぶ。」
疾風が、と心の中で付け足す。
「はい。」
と素直に返事をし、静乃はトントンと階段を上がって行った。
「疾風〜?」
襖を開け、中に入る。
疾風は布団の中で丸まっていた。