紅き天
少し躊躇いつつ、静乃は思い切って切り出した。



すると、疾風はニッコリ笑った。



「静乃が誘うなんて、珍しいな。」



ああ、もう、胸がキュンってなった。



静乃はこっそり胸に手を当てた。



「いいよ、暇。
俺も出かけたい。

いつ?」


「いつでも。」



うーん、と疾風は腕を組み、予定を思い返して頷いた。



「今から行くか。
俺、着替えるからお前はその間準備して来い。」


「うん!」



嬉しくて、嬉しくて。



静乃は全速力で家へ戻った。



「母様、私、出かけてきます。」


「また疾風とか。」



フフッと笑い、基子は準備に手をかしてくれた。







余所行きの着物に着替えた静乃は、巾着を持って疾風の家に向かった。



< 65 / 306 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop