紅き天
「静乃。」
「はーい。」
裏口から呼ぶと、すぐに静乃が走ってきた。
「行こうか。」
疾風が声をかけると、静乃は嬉しそうに笑って隣に並んだ。
川に行くと、もう船が待っていた。
「遅いぞ、お前達。」
またいつものように待たされていた宗治が文句を言った。
「悪い。」
疾風もまたいつものように端的に詫びて船に乗り込んだ。
「静乃、落ちるなよ。」
言いながら、疾風は静乃の手を取って船に乗せた。
宗治はひゅうっと口笛を吹き、疾風をからかった。