紅き天
「大体、なんで静乃が怒るんだよ。
俺だってもうそろそろ結婚しなきゃなんねえ年なんだ、女いたっていいじゃねーか。
お前だって、許婚だかなんだかいるんだろ?」



俺だって怒りてぇよ、泣きてぇよ。



片思いなんだから。



こんな気持ちになってるのは俺だけなんだから。



「なんで俺が拗ねられなきゃなんねえんだよ。」



俺、静乃に振り回されてばっかだ。



最後にそう呟くと、疾風は黙って階段を下りた。



下には心配そうに手を組んだ基子が待っていたが、無視をした。



俺だって被害者だ。



泣き虫の静乃に振り回されてばっかだ。



俺を慰めてくれるのは誰もいない。



…こういう時は武器の手入れをし、無心になることしか知らない。



慰めは期待しない。



見事に打ち砕かれるから。




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