紅き天
喧嘩
何もかもすっぽりと包み込むような闇夜。
疾風は静かに大通りを歩いていた。
幾人かが、足早にすれ違っていく。
懐を押さえて。
強奪されるのを恐れているのか。
ならば、もっと早くに帰ればいいのに。
やがて、人通りはぱったり途絶え、道から外れた蔵が見えるだけになった。
疾風は足音を殺して入っていく。
見張りの首を掻き、監視の目を消すと、スッと屋根裏に上がって武器を構えた。
ここは麻薬の密売人たちの根城だ。
人数は男約30人。
楽勝。
フッと疾風は笑った。
今日は殊更ムシャクシャしているから、半刻もかからないだろう。