紅き天



宗治は重い足を引きずって、木更津呉服屋の前に立った。



何年ぶりだろう、木更津(敵陣)に乗り込むのは。



実は、宗治と伝蔵も幼馴染で、仲がよかった。



いつからか、その関係はひび割れ、そして今に至っている。



あれぁ、お互いの正体がバレてからだったかな。



宗治はふと、懐かしそうに笑った。



自分達は、ただの少年だった。



少し前までの、静乃と疾風のように。



ただ純粋に、楽しんでいた。



なのに、壊れてしまった。



確か、10歳だったかな、決別したのは。



幼いながら、なんとなく不穏な空気は感じ取っていた。



伝蔵と遊んでくる、と家を出ると、必ず両親が伝蔵を睨んでいた。



その理由がわからず、ぎゅっと伝蔵の手を握ったものだ。







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