紅き天
仏頂面で、伝蔵は目をそらした。



伝蔵も心配していたらしい。



「ったく。
お前も昔から隠し事が出来んな、まったく。」


「なんの話だ。」



今では宿敵同士。



だが、本心は信頼している。



だから、殺し合いになっていない。



「任せとけ。
解決してやるよ。」


「泣かせたら殺すぞ。」



伝蔵は悔しそうにいい置き接客に戻った。



いそいそと、宗治は二階に上がる。



昔の記憶を頼りに、静乃の部屋を探した。



もう10年も昔だ。



「静乃、いるか?」



なるべく優しく声をかける。




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