平凡な恋の話 No.2

 『・・・なんで歌わないと・・・

  いけないんですか、海我先輩』

 ‘海我先輩’ってまともに言えて

 ちょっと安心する私がいた

 私は頬を伝っていく涙を

 手でふきとり立ち上がる

 そして棚に置いていたトランペット

 を持ち、海我先輩に背を向けて
 
 1歩踏み出そうとした時

 『歓迎コンサートの時にも

  言ったと思うけど・・・

  俺はお前の歌が好きだ・・・!』

 ドキッ・・・

 海我先輩の言葉が私の心を揺さぶる

 また・・・

 また、私の歌を好きって

 言ってくれた・・・!

 ふきとったはずなのに

 またボロボロと涙がでてくる!

 どうしよう・・・!

 今度はふいてもふいても

 全然止まらないよ・・・

 必死に止めようとした時

 ギュッと後ろから腕が・・・

 私は一瞬、目を見開いて固まった

 自分でも分からないほど

 ドキドキしてることが

 すぐにわかったからだ・・・

 『歌うのが嫌いな理由・・・

  教えてくれないか・・・?

  もう、歌えなんて言わネェから』

 海我先輩の声が耳のすぐ横で

 聴こえるよ・・・

 ‘耳元で囁かないで・・・!’

 なんて強気のこと今の私には

 言えなかった・・・

 『な?

  誰にも言わないから・・・』

 先輩の甘い誘惑・・・

 瑠璃にも話したことがないこと

 

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