首筋、君の手が触れた。
美優は周りを見渡して、
『茉莉はどこかなぁ?』
と言った。
茉莉、茉莉、茉莉。
あぁ、茉莉…か。
茉莉は、嫌いだ。
大嫌いだ。
あいつは、私を傷つけてばかり。
私を見下して、踏みつけて、
『うん、どっかでうるさく、
騒いでるんじゃない?』
『…さくら、また、顔に出る。
眉間に皺がよってるよ?
ダメでしょう?
今年からは文理違うし、
関わることも少ないから、
心配しなくても大丈夫。』
美優は優しい。
山本と同じ優しさを、
彼女は持っているのだ、と
茜は思う。
大抵それは嬉しいものだが、
ときに、茜に追い討ちをかけるもの。
しかし、
それでも茜は美優が好きだった。
『今年から校舎、
第二棟だってさ、行こう!』
そして茜と美優は、
白い廊下を歩いてゆく。