首筋、君の手が触れた。
駅のホームには、
まだ誰もいない。
境智晴は、毎朝、
7時10分の電車に乗る。
本当は、
8時の電車に間に合えば、
学校に余裕で行けるのだが、
彼は必ずこれに乗る。
彼は人混みを嫌う。
人とぶつかるのが嫌いだ。
人混みの匂いが嫌いだ。
彼は人が面倒だった。
一人の方が気が楽だった。
人が面倒なのだ。
しかし嫌いではなかった。
人と共にいることは好きだった。
しかし、関わると必ず、
何かと摩擦が起きる。
彼はそれが嫌だった。