首筋、君の手が触れた。




佐倉茜は、バサバサと、

いささか乱暴に配りながら、

考えていた。












結局、話し掛けられなかった。

またまたまた、だ。

だって、目も合わせないのに、

どうやって、何を話そう?

だいたい、智晴だっておかしい。

普通、

《やぁ、久しぶり》

とか、

《これからもよろしく》

とか、言わないかな?

やっぱ嫌われてる?

でもなんで?












そんなふうに悶々と、

答えの出ない問いかけをしていた、



その時




ぶわっと突風が吹いて、

『あっ!!』

と、廊下から、小さい叫び声がした。



たまたま廊下のすぐ近く

ドアの真ん前で配り物を数えていた茜は、


その小さな叫び声が聞こえた。

教室の中はざわめいて、

茜以外、誰も聞こえていないようだ。



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