首筋、君の手が触れた。


あ…

どうしよう、チャンスかも。

誰もいないし。



でも、駄目かな。

私、嫌われてるみたいだし。

そう考えてまた悲しくなった。

そして、そのまま教室を、

出ようとした、その時。


『…佐倉、今日は、ごめん…

ありがとう。』







智晴だった。


茜が驚いて、言葉も出ないうちに、

『…ほんとに、ありがとう。

じゃあ、また明日。』

そういって、智晴は、

帰ってしまった。




でも、茜は気づいた。

智晴の顔が、

赤くなっていたことに。





もちろん、

智晴は照れていたのだ。

だから、ぶっきらぼうな、

態度しか出来なかった。

話し掛けるのだって、

実は智晴も茜に話し掛けたいのだが、


照れ臭くって、なかなか、

出来なかったのだ。




しかし、茜は気づいてなかった。

根っからの鈍感なのだ、

そういった感情にだけは。

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