首筋、君の手が触れた。


『佐倉さん、境とぎこちない。

なんか不自然なんだよ。

だから、意識してんのかな、と。

違ったらごめん。』





『…………………………』

佐倉さん、黙っちゃった。

怒ったかな?



しばらくして、茜は話しだした。



『…まさか、私、多分、

智晴に嫌われてるんだよ?

だから、私はともかく、

智晴はきっと私を嫌ってる。』

笹島は茜を見た。

茜は、すごく、すごく、

泣いてしまいそうな、

寂しそうな微笑みで、

笹島を見た。

射ぬくような目だった。

『…私、智晴としゃべりたい。

だけど、やっぱり駄目かな。

この間、ちょっとだけ、

話し掛けてくれたけど、

それは、私が手伝ったから。

お礼言っただけなんだよ。

私はね、普通に話したい。

前みたいに、それだけ。

これって恋なのかな?』

『…でもね、目も合わせてくれない。

話し掛けてもくれない。

もし恋なら、失恋確定だよ。

馬鹿みたいだね?』


斜め下を見ながら、

自嘲するようにおどけた。





< 68 / 110 >

この作品をシェア

pagetop