首筋、君の手が触れた。
しとしと、しんしん。
雨は強くなっていった。
何時間か無言だった。
唐突に、笹島が言った。
『…お前、好きな人、いる?』
智晴は驚いた。
いきなり、それ聞くか?
『…ん、いない…かな。』
笹島は、智晴の目を見た。
真剣な目だった。
『…本当か?』
笹島の目は鋭かった。
智晴は少し不機嫌に言った。
『こんなことで嘘ついて、
何の得になるんだよ。
いないよ、今のところ。』
そう言うと、何故か、
笹島は、嬉しそうだった。