首筋、君の手が触れた。
2年3組30番 佐倉茜
軽く眉間に皺がよる。
視力が最近、めっきり落ちた。
原因は分かり切っている。
勉強のせいだ。
黒板だって見えにくいのに、
何だって、あんな蟻のような、
小さい掲示が読めるだろう。
しかも、この人混み。
もともと、身長が高くない。
それに加え、目も良くない。
離れたこの場所から、
見えると言う方がおかしい。
もう、このまま、
教室に行ってしまおうか。
佐倉茜は思った。
ローファーは自転車に
入れて置けばいい。
そして、教室を巡って、
貼ってある名簿を見ればいい。
掲示を見るよりも、
断然、手間と時間がかかる。
しかし、と佐倉茜は考えた。
この騒ぎの中にいるのは、
かなりしんどい。
黄色い声が飛び交い、
笑いさざめく生徒達は、
いかにも幸せそうで。