首筋、君の手が触れた。


『でさ、クリストファーがすげぇの!

めっちゃ演技うまくて!

あの映画、ほんといいよ!』


『えー、ほんと?

確かにあの俳優は渋いよね。

見たいなぁ…』


目の前のストレス発生源。

それは他ならぬ、

笹島祐貴と佐倉茜。


笹島の恋愛に協力するはめになった智晴は、

苦い想いで、この会話を聞いていた。



本当は、聞きたくない。

本当は、遮ってやりたい。

だって、俺は、佐倉が…

やっと、気づいたんだ…


でも、それは出来なかった。

智晴は、お人好しだった。

争いを、極端に嫌った。

だから、ただ、見ていた。









『それなら、俺、DVD貸すよ!

今借りてるんだ。』



『えっ、そんなの悪いよ。

自分で借りるからさ。』




会話は続く。





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