パリの恋
ロイは’地味’という言葉が浮かんだが、失礼だと思いあわてて打ち消した。

決して顔の作りが悪いわけではない。どちらかといえば美人だと思う。しかし、化粧をしていないからか、どことなく幸薄な雰囲気が漂う。日に焼けてない白い肌は美しいというより、不健康な印象を与える。

「君は何歳?学生に見えるけど・・・」

ロイがそう言うと、小夜は驚いて笑った。

「違うわ。私、27歳。この前まで働いてたの。・・・そんなに幼く見えるのかしら」
「27歳?驚いたな。19歳ぐらいかと思ってたよ」

小夜はふふふと笑って言った。

「いくらなんでもそれはないわ!もしかして気を使ってくれてるの?」

小夜の笑顔はロイの心を弾ませた。

「気を使う?社交辞令なんて言い飽きてるのに、今ここで使うつもりはないよ」

ロイは冗談めかして言った。
二人で微笑みあう。

車中はずっと二人でおしゃべりをして過ごした。
小夜はロイの話に、じっと耳を傾け、わからない英単語が出てくると少し首をかしげるので、ロイは小夜のわかる単語でそれを言い換えてあげるのだが、その行為は全く苦ではなかった。むしろ、そうすることで小夜が理解したとうんうんと頷くと、嬉しい気持ちになる。

あっという間に時が過ぎ、二人はアルルにたどり着いた。
しかし、もう夜の9時を過ぎている。泊まるホテルを探したほうがいいだろう。
駅にはタクシーもなく、電話でタクシーを呼び出し、アルルの中心地まで連れていってもらう。

空きがないのを覚悟でアルルの中心地にあるホテルをあたった。
しかし、幸運にも2部屋あいていた。
元は修道院だったらしく、綺麗に改装されていた。エントランスには大きなマリア像があり、装飾しすぎない静かな雰囲気はまさに修道院を思わせる。中庭も綺麗に剪定され、昼間はきっとまぶしい日差しが入り込むだろうと思わせた。

小夜はとても気に入ったらしく、目を輝かせて喜んだ。

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