パリの恋
ホテルに戻り、明日朝食の時に迎えにいくと言って各々部屋に入った。
ロイはシャワーを浴び、ミニバーのライム味のぺリエを飲んだ。
そこでやっと、パリの友人に何の連絡もしていないことを思い出した。
慌てて携帯電話を取り出す。いくつか着信があった。

「ロイ!」
友人は怒ったような声を上げた。
「ごめん、連絡しなくて。今アルルにいるんだ」
「アルル!?何だってそんなところに・・・心配したんだぞ」
「ごめん。明日にはパリに戻る。また連絡するから」
「女か?」
友人は笑いながら尋ねた。
「そんなんじゃないよ」

ロイは誤魔化して、詮索される前に電話を切った。

そんなんじゃない・・・。そうだ、小夜は他の女性とは少し違う。

(そういう艶めいたものではなく、なんていうか・・・)

初恋の少女に感じるような、淡く、純粋な気持ちにさせるのだ。
あの無邪気さや一生懸命さ、謙虚さを持った女性はロイの周りにはいなかった。
ぺリエの泡を見つめる。そう、まさにぺリエのようだ。体に爽快感が走る感じだ。

その時、扉がノックされた。もうそろそろ12時である。

「はい?」
「あ、あの・・・小夜です。まだ起きてる?」

ロイはバスローブのまま出ていいか迷ったが、とりあえず用事を聞くだけ聞こうとドアを開けた。
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