パリの恋
「どうしたの?眠れない?」
「ごめんなさい。お疲れよね?」
「いいや、なんだか興奮して眠れないなと思っていたところだよ。入る?」
「いいの?」

ロイは微笑みを返し、小夜を部屋に導いた。

「ぺリエでも飲む?」

そう言って小夜を見ると、手にワインの瓶と紙袋を持っていた。

「あなたさえ良かったら、もう少し付き合ってもらえるかしら」

小夜は遠慮がちに言った。
ロイは驚いてワインの瓶を手にする。

「いつ買ったの?」
「今朝よ。お金を盗られる前にスーパーマーケットで買ったの。買うつもりもなかったんだけど、何気なくスーパーマーケットに立ち寄ったら欲しくなっちゃって。すごいのね、ワインの数の多さったら。夜、1人でワインとチーズで楽しむつもりだったの」
「驚いたな。じゃあ、今日一日ずっとこれを鞄に入れていたの?」
小夜は恥ずかしそうに頷いた。

「僕もご一緒していいんだね?」
「そうしてくれると嬉しいわ」

ロイはフロントに電話し、グラスと皿、ナイフとフォークを持ってくるよう頼んだ。夜中なのに、快く引き受けてくれた。チップを多めに置いていこう。
小夜が壁際の椅子に座ろうとするのを見て、ロイは言った。

「その椅子は硬いだろう?ベッドに座っていいよ」
「でも、汚したら大変だわ」
「汚れたら君のベッドで一緒に寝るよ」

ロイは冗談めかして言った。

「あら、それはわざと汚せって言ってるのか、絶対汚すなって言ってるのかどちらかしら」

小夜も笑いながら答える。
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