パリの恋
「父が再婚して、マンションを出ていった夜に、あの絵を持っていってないことに気がついたの。ああ、父は過去を捨てて、あの人と人生をやり直したのね・・・と思ったら急に、私はなんでここにいるのかしらって思えてきて。
次の日には会社を辞めるって言って、旅行会社に駆け込んだの。勢いで出発したから、何の下調べもしなかった。だからあのカフェが現存するのも知らなかった」
「すごい衝動に駆られたんだね」
『衝動』とう単語がわからず、小夜は首をかしげた。
ロイは’目に見えない力に動かされた’と言い換えた。
小夜が頷く。
「とにかくあの絵が描かれた場所に行きたい!って思った。ずっと別世界だと思っていた空間に行って、現実として感じたかった。なんていうか・・・手に届かないものではないって、思いたかったのね。」
ロイは頷いた。
「どうだった?現実として感じた感想は?」
「ああ、あのぼろぼろのアパートとアルルは繋がっていたんだわって思った。上手く言えないけど・・・あの生活があったからアルルに来たんだと思うし、あの絵が私をアルルに来させたのねって」
「そう・・・。君にとってはフランスに来ることはただ単に’旅行’ではなかったんだね。フランスに来るということは、君が今までの自分を脱ぎ捨てて、新しい世界に飛び込むことを意味していたんだ。飛行機に乗って、入国審査をして、パリの街を歩いて・・・そうすることで、徐々に脱ぎ捨てたんだ。一枚ずつ服を脱ぐようにね」
ロイがそう言うと、小夜は驚いた顔でロイを見つめた。
「すごい・・・なんでわかるの?」
「僕もそうだからさ。フランスに来ると、イギリスでの堅苦しい生活から解放される気がするから」
そう・・・と小夜は微笑んだ。
「なんだか、あなたに話したら、すごくすっきりしたわ。父のこと、誰にも話したことなかったの。前の彼にも友達にも」
「お役に立てたなら光栄だよ」
小夜はじっとロイの瞳を見つめた。ワインのせいか、その黒い瞳は潤んで、黒真珠のようだった。
次の日には会社を辞めるって言って、旅行会社に駆け込んだの。勢いで出発したから、何の下調べもしなかった。だからあのカフェが現存するのも知らなかった」
「すごい衝動に駆られたんだね」
『衝動』とう単語がわからず、小夜は首をかしげた。
ロイは’目に見えない力に動かされた’と言い換えた。
小夜が頷く。
「とにかくあの絵が描かれた場所に行きたい!って思った。ずっと別世界だと思っていた空間に行って、現実として感じたかった。なんていうか・・・手に届かないものではないって、思いたかったのね。」
ロイは頷いた。
「どうだった?現実として感じた感想は?」
「ああ、あのぼろぼろのアパートとアルルは繋がっていたんだわって思った。上手く言えないけど・・・あの生活があったからアルルに来たんだと思うし、あの絵が私をアルルに来させたのねって」
「そう・・・。君にとってはフランスに来ることはただ単に’旅行’ではなかったんだね。フランスに来るということは、君が今までの自分を脱ぎ捨てて、新しい世界に飛び込むことを意味していたんだ。飛行機に乗って、入国審査をして、パリの街を歩いて・・・そうすることで、徐々に脱ぎ捨てたんだ。一枚ずつ服を脱ぐようにね」
ロイがそう言うと、小夜は驚いた顔でロイを見つめた。
「すごい・・・なんでわかるの?」
「僕もそうだからさ。フランスに来ると、イギリスでの堅苦しい生活から解放される気がするから」
そう・・・と小夜は微笑んだ。
「なんだか、あなたに話したら、すごくすっきりしたわ。父のこと、誰にも話したことなかったの。前の彼にも友達にも」
「お役に立てたなら光栄だよ」
小夜はじっとロイの瞳を見つめた。ワインのせいか、その黒い瞳は潤んで、黒真珠のようだった。