パリの恋
「あなた・・・本当に素敵な人ね。優しくて・・・気がきいて・・・。私、ずっとついてない人生だと思ってきたけど、あなたみたいな人に出会えて、なんて幸運なのかしらって、今は思うわ」

小夜のロイへの感謝の気持ちを露にした柔らかい表情に、ロイは胸を締め付けられた。
それは魔法をかけられたように、突然ロイに訪れた感情だった。

(これは一体・・・)

ロイは困惑した。目の前の小夜は暖かい光を放っているようにすら見えた。
由加子の時のような、激しい感情に襲われるのとは違う、小さな波が徐々に押し寄せるように、それはロイを包み込んだ。

小夜はワインを飲み干して、時計を見てハッとした。

「大変!もうこんな時間!・・・ごめんなさい、こんな遅くまで・・・。話を聞いてくれてありがとう」

小夜が帰ろうとしたので、ロイは咄嗟に小夜の腕を掴んだ。

「待って・・・!」

小夜は驚いてロイを見た。
ロイも自分でなぜ引き止めたのかわからず、うろたえた。

「いや・・・、もう少し・・・もう少し飲もうよ。ほら、ワインもまだ残ってる」
「・・・そうね。私も・・・本当言うと、もう少し飲みたいの」

小夜はワインのボトルを見て、恥ずかしそうに笑った。
ロイはホッとして小夜の腕を離した。
そして小夜を見つめて心の中で呟いた。

ベッドにワインを溢そうか・・・?
< 19 / 41 >

この作品をシェア

pagetop