パリの恋
小夜は、へえ~と感心した。地下回廊はとても薄暗い。
ロイは自然と小夜の手を握った。ひんやりと冷たく、か細いが、小夜は力をこめてしっかりと握り返してきた。
地下回廊を出てアルルの町をゆっくりと、小夜の歩幅に合わせて歩く。小夜がロイを見上げて微笑む度にロイは嬉しさで目を細める。

ロイの中で徐々にある感情が膨らんでいく。

それは夕方になってアルルの観光を終えると更に大きくなり、明日小夜が日本に帰ることを思うたびに胸を締め付けた。

(日本に・・・帰したくない・・・)

二人は地下回廊からずっと手をつないで歩いた。それはまるで、ずっとそうしてきたかのように自然な振る舞いだった。

アルルの駅から電車がゆっくりと走り出す。
小夜はポツリと呟いた。

「もう・・・終わってしまうのね」
その声は、寂しさを隠すかのようにぎこちなかった。

ロイは何も言えず、小夜の手をぎゅっと握った。



前編終わり
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