パリの恋
しばらくして、小夜が店員と共にロイの元に戻ってきた。
長い髪は頭のてっぺんあたりでアップされ、大きなカールでふんわりと広がっている。前髪は少し横に流して、小夜の小さい額がすこし見えた。
メイクは派手すぎず、大きな黒い目が更に強調され、いっそうキュートな印象を与えた。
「素敵だ・・・言葉もないよ」
ロイは小夜の手を取り、囁いた。
小夜は頬を赤らめ恥ずかしそうに微笑んだ。
ロイはポケットから箱を取り出し、小夜に渡した。
「プレゼントだ。つけてみて」
小夜は驚いて箱を受け取った。
「プレゼント?」
ロイが開けるように促す。
小夜はゆっくりと丁寧に箱を開けた。爪も綺麗にマニキュアが塗られている。
「すごい・・・これ・・・」
ピンクゴールドのネックレスにダイヤが三つ連なるようについている。
ロイはネックレスを受け取り、小夜につけてあげた。
小夜を鏡の前に連れていく。
「完璧だ」
全身を鏡に映し出し、小夜は食い入るように自分の姿を見つめた。
「夢みたいだわ・・・」
小夜は日本語で呟き、呆然と自分の姿を眺めた。
ロイは鏡越しに小夜を見て微笑んだ。
「今、パリで一番美しい女性は君だ。いや、世界一かな」
小夜はロイを振り仰いだ。ヒールの分、顔が近い。今にも泣きそうに瞳が潤んでいる。
「ロイ・・・ありがとう。こんな素敵なクリスマスプレゼント、ないわ・・・」
思わずキスしてしまいそうになる衝動に駆られる。
ロイはグッと堪え、代わりに小夜の肩を抱いた。
「・・・では、パリの夜を楽しもう」
シャンゼリゼはイルミネーションで光り輝いていた。
ロイに手を引かれて、小夜は歩きにくそうにヒールと格闘していた。
「何が食べたい?」
「なんだか胸がいっぱいでお腹がすかないわ」
「それは困るな。綺麗な君を見ながらワインを味わうのを楽しみにしてたのに」
「なによ。最初からワインのことしか考えてなかったのね」
そう言って笑った。
少女のように白い頬をピンク色に染め、嬉しそうに笑いロイの手を握る小夜を、この上なく愛しく思った。
(帰したくない・・・小夜を日本に帰したくない・・・)