桜のなく頃
「ん?」

彼女からの思いもよらない言葉にほんの一瞬思考が止まった。

「まぁ、一応幼なじみだしな…。」

そうは答えたけど、少なくとも俺には幼なじみ以上の感情はあった。

多分向こうにも…。

お互いに好きだとかは言ったことはなかった。

だけど彼女が引越してしまう前、

一度だけ重ねた唇の温かさは今でも忘れない。

「そっかぁ。ねぇ…。」

彼女は俺の名前を呼ぶ。

「どうした?」

彼女は顔に綺麗な笑みを浮かべながら言った。

「桜…見に行こう。」

「あ、あぁ。」


唐突な申し出だけど断る理由は何もない。

< 3 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop