星空に光
静かな廊下をただ一人、歩いてみる。
誰かのすすり泣く声はまだ聞こえたけど、
病室からは遠いロビーに来た。






洸輝は、死んだ。




「洸輝が、死んだ」



口に出してもみる。

実感が無いとか、そういうんじゃない。気がする。


もう診察時間は過ぎてるから、
ロビーも暗く、
ベンチはひんやりしてる。
きっとあたしも、
冷たい人間なのかな






「うわ、
幽霊かと思った」

いきなり頭上からデリカシーの無い声が響いた。


笑えない、冗談。



無視をきめこむあたしに、
やっと自分の失言を自覚したのか、見知らぬ男は「ごめん」と軽く頭を下げ隣に座った。




「こんな時間にこんな場所で何してんのかと思ったからさ」


「関係ないでしょ」


「俺は昨日入院したばっかり。
ま、ただの盲腸だけど」

病院食って少なくて。腹減って寝れねー。


そいつはそう言うと自販機まで駆け足で行くとガコンっという音を2回鳴らしまた戻ってきた。



無言であたしに冷たいウーロン茶を差し出してくる。


「ありがと…」


受け取ってみたものの、
到底飲む気にはなれなかった。



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