【短編】しろ犬のしっぽ ~幾多の時間(トキ)を経て~
「ううん……二度」


「二度か……
…逢ったのは…たったの二度………」


― 二度目は
お別れのときだったんだ…… ―



「希毬さん、
三度目の正直!」


「三度目の正直?」


「そう!
二度あることは、三度ある!とも言える」


「え?」


「二度、逢ったんでしょ?
だから、今日で三度目!」


「そっか」


希毬は、
私の言葉に素直に微笑んでいた。


―――――…


…―――――



どれくらいの時間が経っただろう…



辺りは静まり返り

月明かりだけ ―…



希毬を見ると、
両手を擦り合わせていた。


私は、
自分のマフラーを
そっと
希毬の両手に被せる。


「あ…
悠さん、いいよ」


「いや…
持ってて」


「ありがとう」



「宗一郎さん、絶対来るから
正夢だから」



「…うん」



私は、
何を根拠に言っていたのか


…―――――



時間はどんどん過ぎゆき…



とうとう…


   … 夜が明けた


私は…


一体何をしているのか…



「わぁ…
綺麗な…日の出…」



希毬は、

そう呟いただけ



私は、

一体…
何をしているのか



自分の生まれる前の時代に来たという、
この非現実的な出来事に麻痺したのか、
私は、
とんでもない思い上がりをした


私が此処へ来たのには意味があって、
それはこのことだったんだなどと勝手に思い込み、
勘違いな閃きをした私の
こんな
とっさに取った行動…


結局

私のしたことは…


希毬を傷付けただけだった…



「悠さん、帰ろう」



それでも



希毬は、微笑む



歩いていく希毬に、


私は、
ただただ…申し訳なくて

何も言えなかった…

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