【短編】しろ犬のしっぽ ~幾多の時間(トキ)を経て~
季節は廻り、

私が此処へ来て、
一年が来ようとしていた。



「あっ…

もうすぐ誕生日だ…」


薪割りを済ませて、
駆け寄ってきた牡丹と戯れながら、
縁側に座り、
ぽつりと呟く。



「え?そうなの?
じゃあ、御祝いしなきゃ!」



あの日以来、
あまり言葉を交さなかった希毬が、
また、前の様に話かけてきた。


そして、
私の側に腰を下ろす。


「ごめんなさい」



私は、
ずっと言おうと思っていた言葉を、
ようやく言った。



希毬は、
黙って首を振った。


そして、
そっと微笑んだ。



「私、お願いしたから」



「お願い?」



「うん。

逢えなくてもいいんだって
心から思える様に、
私を、強くして下さい、
って
…空に」



「そう…

…僕は、思い上がってたんだ…

此処にいることの不思議さに、正夢も有り得ると思って…」



「悠さん…

ありがとう」


「え?…」


「ありがとう」


「どうして…」


「私のためにしてくれたんだって、
悠さんの思い、
わかったから、
今は、素直に、そう思ってる」


「…そう…

…ごめんなさい…本当に」


「よし!じゃあ、
これで仲直りね!」


そう言って、
希毬は、私の手を取り、握手をした。


「これでおしまいっ仲直りっね!」


「…うん
本当に…ごめん」


「もういいから」


「…うん」


「よし!
じゃあ、ご飯にしよ。
薪割りもして、
お腹すいたでしょ?」

「あ、うん」


「じゃあ、居間に行きましょう」


「はいっ」


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