【短編】しろ犬のしっぽ ~幾多の時間(トキ)を経て~

めぐり逢い

三回忌



たくさん流した涙の通夜から月日は過ぎ去り、
無事に三回忌を終えた。


多くの来賓と御礼の会食。


「あ!また来てるー」

娘が、何かを見つめて指差した。


見ると、
真っ白な子犬が一匹。

生きていた頃の祖父の特等席で伏せをしている。


「まぁー、いつの間に」

「お父さん、この間もだよ」

「そうなの?」

「うん」

「そう。
どこの犬だろうねぇ。
居てもいいけれど」


私は、ふと、
懐かしい事を思い出す。


― 今度は、白い犬になりたいのう ―


~お祖父ちゃん
    言ってたな…~


見ていると、
だんだんとお祖父ちゃんに似て見えて、
私は、そっと微笑む。


よく見ると、
首輪をしていて
名札の様なものがぶら下がっていた。


「何か付いてるな
…三丁目…木村 トド…」

「犬なのにトド~?」

子どもたちがはしゃぐ。

子どもたちの声に驚いて、白い子犬は飛び起きた。

「わぁー!可愛いっ可愛いっ」

子どもたちは、
更にはしゃぐ。


「三丁目の木村さんのとこの犬?」

側にいた母が尋ねた。

「三丁目に木村さんっているの?」

「うん、いるわよ」

「そっか。よし!
飼い主に届けに行こう。
心配してるかもしれないしね」

「うん!」


嬉しそうに元気良く頷いた我が子二人と一緒に、
私は、三丁目の木村さん宅を探した。


十歳の長女が、
愛しそうに子犬をだっこする。

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