【短編】君と僕、
秒殺
「…おい」
「なに」
「やめろよ」
「なにを」
「アリだって生きてんだからよ…」
「アリを殺してはいけないなんて法律ないじゃん」
「ないけどさ…なんか…命じゃんか」
「このアリは私に殺されるって決まっちゃったの。私によって人生の幕が落ちる運命なんだよ」
「お前がやめればアリの人生は変わるだろ」
「しかたないんだよ。決まっちゃったんだから。そしたらなに、昨日ニュースでやってた車に跳ねられた子は道路に飛び出すのが、一秒でも遅かったら助かったじゃん。全部、全部そうじゃん。このアリは私の前を通ってしまったんだから。そういうこと。」
君の言うことはめちゃくちゃだ。
めちゃくちゃなんだけど、さ。
全 て は 一 分 一 秒 で 決 ま る
「こんなこと言ってたら救われないね」
-完-