君が生きて 俺は死んだ
 
平静を装い布団に潜り込む。

飲み込んだものの消化しきれない想いは、今日も心の奥底で眠りに着くのだろう。


それでいい。

壊す必要なんてない。

いずれ嫌でも壊れてしまうかもしれないのに……




……焦りは捨てろ。


「もしかして仕事する気?」

俺の目に見えない焦りとは違い、ユチの焦りは手に取るように分かった。


「した方がいい?」

「ダメ。殺す」

「じゃあしないよ」

「考えてもダメ。殺す」

「わかったって」

「よろしい」

「内職も」

「殺す」

「了解です」




半月程前、突然ユチが俺に家にいて欲しいと泣きついた夜があった。

勿論、何の理由もなく仕事を辞められるワケがなかったため、まずは話だけを聞いてみることにした。


「一緒にいたいから」


理由はそれだけだった。

それに次いで俺の面倒まで見ると、その分も稼ぐからと懇願した。


バカバカしいと思った俺は、つい表情に出してしまったのか。

それを見たユチは




──サクッ




……綺麗に一筋の血が流れた。

白い手首を汚して


「お前バカか」

「バカだよ」

「…………」

「ほっとけば。私バカだし」

「何がしてえんだよ」

「だって死にたくなるんだもん」

「マジで言ってんの?」

「うん」

「もう2度とすんな、こんなこと……」

「じゃあ行かないで」

「…………」

「もうダメなんだよ、私……」




返す言葉は、未だに見つからない。
 
< 15 / 18 >

この作品をシェア

pagetop