君が生きて 俺は死んだ
平静を装い布団に潜り込む。
飲み込んだものの消化しきれない想いは、今日も心の奥底で眠りに着くのだろう。
それでいい。
壊す必要なんてない。
いずれ嫌でも壊れてしまうかもしれないのに……
……焦りは捨てろ。
「もしかして仕事する気?」
俺の目に見えない焦りとは違い、ユチの焦りは手に取るように分かった。
「した方がいい?」
「ダメ。殺す」
「じゃあしないよ」
「考えてもダメ。殺す」
「わかったって」
「よろしい」
「内職も」
「殺す」
「了解です」
半月程前、突然ユチが俺に家にいて欲しいと泣きついた夜があった。
勿論、何の理由もなく仕事を辞められるワケがなかったため、まずは話だけを聞いてみることにした。
「一緒にいたいから」
理由はそれだけだった。
それに次いで俺の面倒まで見ると、その分も稼ぐからと懇願した。
バカバカしいと思った俺は、つい表情に出してしまったのか。
それを見たユチは
──サクッ
……綺麗に一筋の血が流れた。
白い手首を汚して
「お前バカか」
「バカだよ」
「…………」
「ほっとけば。私バカだし」
「何がしてえんだよ」
「だって死にたくなるんだもん」
「マジで言ってんの?」
「うん」
「もう2度とすんな、こんなこと……」
「じゃあ行かないで」
「…………」
「もうダメなんだよ、私……」
返す言葉は、未だに見つからない。