君が生きて 俺は死んだ
 
店に着いたのは昼過ぎだった。

最後に携帯で時間を確認したのが15時。

それから意識が朦朧とする中で、エンヤを2曲くらい聴いた頃に途絶え……




「すいません。閉店でございます」

これだけ不条理な振る舞いをした客を丁寧な物言いで起こせる器量の高い声。

販売員の鑑(かがみ)だ。




……それにしても寝過ぎた。

いつの間にかBGMはエンヤから蛍の光になっている。


「おーい、ユチ起きて」

「んー……」

「もう閉店だって」

「……いま何時?」

「あと2時間でバイトだよ」

「!?」

ユチは完全に目を覚ました。


「何で起こしてくれなかったの!」

「俺も今起きたとこ」

「はぁ……またいつもの感じか」

「だね」


家で過ごすのは芸がない。

それではデートとは呼べないと、突然ユチは言い出した。

だから外に出向いたというのに……




「まだエンヤ聴きたい?」

「全然」




……俺達らしいと言えば、それまでだ。
 
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