君が生きて 俺は死んだ
試聴機の中のユチが聴きもせず駄作と豪語していたCDは、すでに俺の手元にあった。
数日前に入手してから、ほぼ毎日と言っていいくらい聴き込んでいたため、どの曲を流せばユチが落ちるか……
……めぼしい曲を瞬時に探り、鳴らす。
「スローテンポ過ぎ」
「うん」
「私もっと激しいのじゃなきゃダメなんだよねー」
「いいから、黙って聴く」
徐々に感覚が蘇る……
初めて聴いた時の、あの感覚。
身体中を駆け巡るみたいに、その音に俺は支配された。
リスニングなんて毎回赤点だった。
直訳できる単語を文法に当てはめることなんてできなくて……
でも、そうじゃない。
そうじゃないんだ。
理屈や御託抜きで、その音に、声に……
俺は満たされていく。
こんなに静かに鼓動が高ぶるのを味わえるのは素晴らしいことだと……
伝えたかった。
ユチにも知ってほしかった。
「……どうよ?」
「最悪」
そう言ってユチは俯いたまま、目をグリグリと擦ってから二言めを口にした。
「化粧ハゲた。もうすぐバイトなのに」
赤らんだ頬から上は、長い前髪が掛かって見えなかったけど……
同じ感覚に陥った者が、そこには居た。