パリ・ローマ幻想紀行
旅行の前日であった。伊沙子さんは、切羽詰った間際でなければ、行動しない質である。空っぽの旅行カバンを見て
「まだカバンに詰めていないの!今まで何をしてたのよ!自分の荷物は自分で詰めてよね」伊沙子さんは、自分の荷物をカバンに詰め始めた。自分はどうなんだと言いたいところである。旅行カバンの容積率は、伊沙子さんが七割で私のはせいぜい三割と言うところだ。先に私の荷物をカバンに詰めても
「私の荷物をどこに詰めるのよ」と文句を言われるのが落ちである。私の荷物を先に詰めても後に詰めても、文句を言われることに変わりはない。
私はティーシャツ一枚を着て、ジーパンを着いて行くことにしたので、八日分の下着と靴下、残りのティーシャツ、それにスーツ一揃えを、予め紙袋にまとめておいた。私の大きな荷物はこれだけである。
「どれ、私が詰めるから」
伊沙子さんは、私が差し出した紙袋を受け取った。全て予想していた通りである。これで、二人の間は万事うまく治まるのである。
「カメラとビデオカメラ、忘れないでね」
伊沙子さんに念を押される。私は、もっぱらカメラマンで、伊沙子さんは旅行満喫者という釣り合いである。
「まだカバンに詰めていないの!今まで何をしてたのよ!自分の荷物は自分で詰めてよね」伊沙子さんは、自分の荷物をカバンに詰め始めた。自分はどうなんだと言いたいところである。旅行カバンの容積率は、伊沙子さんが七割で私のはせいぜい三割と言うところだ。先に私の荷物をカバンに詰めても
「私の荷物をどこに詰めるのよ」と文句を言われるのが落ちである。私の荷物を先に詰めても後に詰めても、文句を言われることに変わりはない。
私はティーシャツ一枚を着て、ジーパンを着いて行くことにしたので、八日分の下着と靴下、残りのティーシャツ、それにスーツ一揃えを、予め紙袋にまとめておいた。私の大きな荷物はこれだけである。
「どれ、私が詰めるから」
伊沙子さんは、私が差し出した紙袋を受け取った。全て予想していた通りである。これで、二人の間は万事うまく治まるのである。
「カメラとビデオカメラ、忘れないでね」
伊沙子さんに念を押される。私は、もっぱらカメラマンで、伊沙子さんは旅行満喫者という釣り合いである。