パリ・ローマ幻想紀行
2・いよいよパリ、ローマへ
 私は、カメラとビデオカメラを入れた小さなバッグを肩から斜めに掛け、大きな旅行カバンを引き摺りながら家を出た。伊沙子さんは、身の回りのものを入れた何時ものカバンを持っている。私から見れば、ちょっと何処かへ散歩にでも出かけるほどの極めて軽装であった。そして、横浜駅で私の従兄弟夫婦と合流し、成田空港でツアーの全員と合流した。総勢三十人ほどのツアーである。添乗員さんは美人であった。成田空港で十日分のタバコを買ってもらった。
《どうして、タバコぐらい自分で買わないんだって?それが、私は一銭も持っていないんだ。伊沙子さんが私にお金を持たせてくれないんじゃなくて、私は根っから金に無頓着な質だから。その代わり、私は伊沙子さんのパスポートは預かっている。何せ、買い物をして、パスポートをその店に置いてくる質だから》
 このタバコで、私の荷物は全て整った。タバコ十個分の容積率で随分と文句を言われた。カバンの容積率というよりも、タバコ嫌いと言う気持ちがまる出しである。機内は私の知らない内に、禁煙席になっていた。しかも、私はカメラマンと言うもっともらしい理由で、窓際に座らされたのである。
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