パリ・ローマ幻想紀行
黒に近い濃紺の地面に曲がりくねったセーヌ川を収める。主翼と地面との関係から、地面に突っ込むように機首を下げているのが体感できる。まるで操縦しているようだ。機体は大きく右に旋回し地面がぐんぐん近づいてくる。建物がはっきりと見え、道路を走る車をビデオカメラに収める。次は着陸の瞬間をワンカットとして収めればよい。ビデオカメラはスタンバイの状態で構える。やがて機体は水平飛行の状態で減速し始める。着陸は間近だ。下界の景色がほぼ視線の高さ近くになって、ビデオカメラのオンのボタンを押す。車輪が地面に接地した衝撃が体に伝わる。地面が速い速度で動くのをビデオカメラに捕らえた。
 十六時三十五分にシャルル・ドゴール空港に着陸し、二十時発の飛行機でローマへと向かう。約三時間半このパリの空港内で時間を費やした。その間私は、この空港に休んでいる飛行機と、一つのテーブルを確保して、ジュースを飲んでいる二つのカットしか撮れなかった。三人の荷物番の任務を伊沙子さんに命令され、身動きできなかったからであ
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