叶わぬ恋

席に着いてウエートレスにコーヒーを注文すると

僕はもう一度辺りを見回した。



ただ昔の友達とお茶してるだけじゃないか・・・


自分の行動に何のやましいところもないはずなのに・・・




「総くんのスーツ姿初めてみた。」


彼女がテーブルに頬杖ついてそう言った。


「変?くたびれたサラリーマンって感じに見える?」


僕がそう言ってネクタイを直すと

彼女は、黙ってジーッと僕を見つめるだけで・・・



僕は、思わず視線を自分の手元に落した。



何を言う気だろう?



僕にとっては忘れられない人だった。


でも・・・

目の前にいる彼女はあのころと変わらなくても


僕にとって変わらなくても・・・




彼女の中では過去でしかないのかも知れない。





「総くん・・・カッコいいよ。

昔もそうだったけど・・・

今の方がうんといい。」



「え?」



思ってもみなかった言葉になんて答えていいか分からなかった。


ただのお世辞としてありがとうって言えばいい?




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