叶わぬ恋
「私ね、個展を開くことになったの。」


帰りの車の中で急に思い出したように彼女が言った。


「へえ~、ことちゃんすごいね。」


「そんなんでもないんだけどね。
知り合いに画廊をやってる人がいて、
それで今まで描いたものを見てもらったの。」



彼女がどんなことが好きで

どんなことをやってるのかなんて・・・

ほとんど知らなかった。




多分・・・


お互いに知らないことばかり・・・




そう・・・知らないことが・・・


あまりにも



多すぎた。







「いつごろ開くの?」


「来春の予定。
総くんも見に来てね。」


「もちろんだよ。約束するよ。」




彼女の笑顔に僕はそう答え

当然のことのように・・・



来年の春は僕らに来ると・・



思ってた。




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