叶わぬ恋
「先に行くから・・・
私の方が先に生まれてくるかな?
だったら・・・
年上になっちゃってても・・・
お嫁にもらってね。」
彼女が笑った。
こんな時でも君は微笑む。
僕は泣き顔を見せないように
ずっと彼女を抱きしめたまま・・
「うん。うん。
どんなことしても必ず、ことちゃんを
見つけ出すから・・・。」
「約束だよ。
もし、総くんが先に生まれてても・・・
待っててね。」
「うん。絶対に待ってるから。」
僕の手を握る彼女の手が・・・
「行く・・ね。」
「ことちゃん?」
その手がもう一度僕の手を
握り返すことは
なかった。