叶わぬ恋


「パ~パ。あい!」



娘がぬいぐるみを持って戻って来た。



受け取ると随分と冷たい。



「ことちゃん、これどうしたんだい?」


「あのね、おうちが暑かったから冷蔵庫に入れて涼しくしてあげたの。」




怒られて来たのだろうが

それでもニコニコと微笑みながら言う娘を見ているうちに



もう一人の


『ことちゃん』のことを思い出す。






彼女はずっと大人だったけれど、とても無邪気で・・・。





ダメだ。





もう一人の『ことちゃん』に再会してから


娘を呼ぶ度に思い出してしまう。







一人だけの秘密





二度ともう一人に会うことはないと・・・




ずっと思っていたのに・・・


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