真夜中の太陽
行きたいわけではなかったけれど、本屋で目に入って、パラパラと何気なくめくったページ。
町並みがキレイで、気付けば買っていた本。
「イタリア。オレ、ずっと行きたいって思っているんだよね」
思いもしない、偶然。
たまたま、その時のきまぐれで買った本。
あたしの大好きな人が今こうして目を輝かせながら見入っている。
「好きなんですか?イタリア」
「うん。行ったこともないんだけど、なぜか魅かれるんだよね」
「何となく分かる気がするかも。行く予定はあるんですか?」
「どうせ行くなら長期の休み取って行きたいしね。今のところ、そんなに長く休みが取れないから、予定さえも立てられないよ」
子供のようにすねるわけでもなく、現実をきちんと見据えて淡々と語る。
いつも冷静で、淡々と物事を話し、笑う時でさえも静かに笑う。
それは本来の性格なのか、それとも仮面をかぶっているのか、私には分からない。
ただ、結崎さんと一緒にいると、時間がゆっくりと流れていく。
心も体も癒されていく。