真夜中の太陽

しばらくして、制服に身を包んだ結崎さんが店内にやって来た。



「お疲れ様。こちら、沢井柚羽さん。今日が勤務初日。で、こっちは結崎永輝くん。分からないことがあったら何でも聞いてね」



無言で顔を合わせるあたしと結崎さんの間に立って店長が紹介する。

色白の、細い目をした人で……

穏やかな表情からは、元暴走族の総長だなんて過去を微塵も感じさせなかった。


そして……

結崎さんの顔を見た瞬間、理由は分からないけれど、自然に思った。



―――……あぁ、やっぱり。この人だ。



世間ではこういうのを「ビビビッときた」って言うんだろうな。

少し前までは「何それ。意味分かんない」とぼやいていたけれど、今になってやっと、ビビビッの意味が分かったような気がする。


あたしの勤務時間が終わる22時までの間。

結崎さんとは一言も話をしなかった。と言うよりも、する機会さえなかった。

分からないことがあれば、結崎さんよりも、マンツーマンで指導している店長に聞くのが自然な流れだったし……。

それに、自分から話しかける勇気さえもなかった。


結崎さんは無口で黙々と仕事をしていて、時折、あたしと目が合うと自然と優しい微笑みを返してくる。

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